<金口木舌>緩んだ地盤


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 思わず読み返した。短文投稿サイトのツイッターで「琉球王国」はなかったと書かれていた。「藩としての『琉球國』しか存在したことありません(笑)」とあるが、全く笑えない

▼ネット上で話題になっている。やりとりから察するに、律令(りつりょう)制の「山城国」や「薩摩国」などの「国」と同列に論じ、「琉球国」も地方の一つと捉えているようだ。ちょっと待って、と言いたくなる
▼考えてもなかった。当たり前と思っていた前提が当たり前でなくなる。よほど固いと思っていた地盤が、実は思いのほか揺らいでいたことに気付く。以前から危うかったのか、それとも急に危うくなったのか
▼2017年度から高校1年生が使用する教科書で、驚く記述が文科省の検定を素通りした。沖縄経済の基地依存度が「きわめて高」く、基地との取引で「ばくだいな」振興資金を沖縄は手にしているというのだ。教科書ってこんなに軽かったか
▼いまだこの手の誤解が跋扈(ばっこ)する現状にうんざりする。書く方も書く方だが、通してしまう政府の方が実は根が深い。従軍慰安婦といい、「集団自決」(強制集団死)といい、日本の歴史が試練にさらされている
▼かつてはマーカーを引いて暗記させられた。教科書の権威はどこへ行ったのか。そのうち「琉球王朝は藩の一つで独立国ではなかった」との記述が検定を通ってくる時代が来るのだろうか。