<金口木舌>格差社会


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 文化面で連載中の小説「バルス」が佳境に入った。派遣社員の厳しい労働環境、そして日本の物流機能の盲点を突いたテロ事件。その背景には階層社会への恨みがあり、テロリストの要求は「派遣法の改正」だ

▼過激派組織「イスラム国」(IS)によるテロ事件が世界各地で発生している。ISの思想に共鳴する若者の背景には「格差」があると考えると、日本でも同様のテロが起きてもおかしくないと思える
▼「格差」は身近に広がりつつある。正社員と非正規雇用、男女の賃金、所得の差からくる教育格差など、個人の努力だけではどうしようもない現状が横たわる。小泉政権以降広がった格差社会。失業も貧困も自己責任とされ、女性や子どもはさらに厳しい状況に置かれがちだ
▼政治によって失われた雇用の安定や生活のゆとりは、政治によって取り戻すしかない。「保育園落ちた」のブログの書き込みをきっかけに、安倍政権は待機児童対策に乗り出した。訴えることで何かが変わると手応えを感じさせた
▼6月には県議会選挙、夏には参院選挙がある。ネットやデモの参加による発信と同様に1票の行使が現状を変える1歩につながる
▼「バルス」に登場する週刊誌記者は指摘する。「格差の底辺であえぐテロリスト予備軍はごまんといる」。ストーリーを現実にしてはならない。