<金口木舌>中国人の親切に触れて


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 昨年12月、中国・北京で開かれた琉球フォーラムに参加した時のことだ。タクシーにうっかりカメラを忘れた。手掛かりはほとんど無し。落ち込んでいると、中国側の関係者が懸命に探してくれた

▼タクシー協会や警察も全面協力してくれた。結局見つからなかったが、困った人への親切心が伝わった。2日後、関係者の一人が同型カメラをプレゼントしてくれたのには感激した
▼地下鉄の電車では、お年寄りが乗ると、離れた場所でもさっと席を立ち、手を引いて座らせる光景を何度も見た。中国社会には、年長者を敬い、年少者をかわいがる“敬老愛幼の精神”が根付いているという
▼マナーが悪い、空気が汚い、脅威だなどの印象が飛び交う。県民意識調査では、中国に「良くない印象」が9割を占める状況が続く。そんな中、中国での体験はカルチャーショックだった
▼翁長雄志知事は昨年に続き10日に訪中、中国要人と会談し意見交換した。経済学者の富川盛武氏によると、中国人観光客が年150万人来沖すれば、在沖米軍基地の経済効果を上回るという。中国人は安全保障面も含め、大切な隣人だ
▼最初は嫌な印象でも、接してみると見方が変わることは案外よくある。沖縄と中国は、もとより先人が築いた長い交流の歴史がある。まずは胸襟を開いて良さを学び合い、心を通わせることから始めたい。