<金口木舌>車中泊から解放を


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 この春、サッカーチーム「沖縄SV」を設立した元日本代表の高原直泰さん。2002年の日韓ワールドカップには出場できなかった。「エコノミークラス症候群」による肺塞栓症が理由だ

▼飛行機で欧州遠征中、左胸にわずかな痛みを覚えた。帰国した2週間後の深夜、胸に激痛が走り、緊急入院した。04年に再発したが、今は自己注射など徹底管理で活動を続けている
▼エコノミークラス症候群は、長時間の同じ姿勢で脚の静脈に血の塊(血栓)ができ、それが血管に詰まり、死にも至る病だ。前兆はほとんどなく突然発症する。高原さんのように若い人でもかかる
▼熊本地震では、車中泊をしていた51歳女性が死亡した。他にも発症疑いが20人以上いるという。益城町の推計では今なお1万人が車中泊をしている。震度5級の激震に何度も襲われると、屋内より車が安全だという気持ちは分かる。プライバシー確保やペットがいるとの事情もある
▼20日付1面の脚を曲げて車内で寝るお年寄りの写真は胸が痛い。1週間過ぎても、10万人近い避難者が過酷な生活を余儀なくされている。政府の対応は十分だろうか。東日本大震災の教訓は生かされているのか
▼被災者のストレスや疲労は限界だ。安心できる居場所を早く確保して少しでも不安を取り除きたい。せっかく助かった命をこれ以上失ってはいけない。