<金口木舌>パナマ文書と所得の再分配


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 自営業だった両親は、年度末の確定申告の時期になると領収書の束とよく格闘していた。「去年より多く税金を取られた」と嘆く言葉からは、納税というよりは努力して積み上げた収益から金を取られているという印象がある

▼「パナマ文書」に名を連ねる政府高官や富裕層の人たちも同様に感じ、高額な納税額にうんざりしていたのだろうか。中米・パナマなどタックスヘイブン(租税回避地)に設立された法人に関する電子ファイルが流出した
▼文書は富める者は資産運用でますます富める手段があり、隠れて富を築いていることを裏付けた。一部の富裕層の話とはいえ身を削る思いで働き、納税している庶民感覚からすると違法でないにせよ心情的に許し難い
▼一方、大方のサラリーマンにとって税金は給与天引きで、自営業者に比べ自分がいくら納税しているのか関心が低い。給与明細を見ても手取り額に気を取られがちだ
▼母は自分が納めた税金がどのように使われるのかを知るため政治への関心は高かった。サラリーマンも確定申告にすれば、税制や政治への関心が高まり、投票率の向上につながるかもしれない
▼ちなみにタックスヘイブンの「ヘイブン」は「回避」の他に「安息の地」という意味もある。所得の再分配が心もとなく消費税増税を控える今、庶民の「安息の地」はどこにあるのだろう。