<金口木舌>必要な次善の策


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 シビアな外交を比喩した言葉の一つにこうある。「右手で握手しながら背中に回した左手にはナイフを握る」。交渉事は冷静な振る舞いだけでなく、場合によってはすごみを利かせることも必要になる。外交は真剣勝負で臨むものということだ

▼沖縄市、北谷町、読谷村と、米軍基地返還地から有害物質ダイオキシン類などの検出が相次ぐ。うるま市では返還地を畑にしようと一部を掘り返すと、廃棄物が出た。地主は地中の調査を行政に求めたが「報道されてもなしのつぶて」と嘆く
▼嘉手納基地周辺の河川からは、国内では原則使用禁止の有機フッ素化合物も検出された。県は「直ちに使用中止」を求めたが、沖縄防衛局は「可能な限り使用抑制を」と不正確に翻訳して米軍へ伝えていた
▼外交は国の専権事項と言いながら、その対応がこれではあぜんとする。それでなくとも機密に覆われた基地である。何があるのかさえ、住民はうかがい知れず、不安は尽きない
▼頼るべき国がこのありさまなら、住民に身近な自治体が次善の策として環境調査や要請をする体制も必要となろう。中部の自治体では環境問題を兼任する事例も多い。英語訳の専門職員がいないところもある
▼住民にとっては生活の問題である。ナイフを握らないまでも、地方自治体もすごみを利かせて対応しなくては住民を守れない。