<金口木舌>休日のありがたみ


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 「日本沈没」で知られる小松左京さんに「ゴールデンウイーク」というショートショートがある。大型連休が終わった5月6日の朝、なぜか世間は4月29日の朝に戻っていた

▼その週が終わると、また4月29日に。それが延々と続く。連休が増えて喜んでいた人たちも、次第に疲れて憂鬱(ゆううつ)になる。だが、年に1回だけ働いてもいい週が来る。人々はその週を「ゴールデンウイーク」と呼ぶようになった…
▼子どもの頃、永遠の夏休みを望んでいた身からすると、うらやましい世界だ。今年の大型連休は日の並びが良く、2日休めば10連休になるそうだ。暦通りでも8日間休める
▼しかし、インターネットの全国調査によると、3連休以上取れる人は40%、平均5・9日だ。別の調査では、暦通りの8日間は休めない人が71%にも上った。観光業やサービス業の多い県内も、仕事の人が相当数いるだろう
▼ドイツの作家ジャン・パウルは「大文字ばかりの書物は読みづらい。日曜日ばかりの人生もそれと同じだ」という言葉を残した。働いたり学んだりする平日があるからこそ、休日のありがたみが増す
▼理想通りは取れなくても、休日は日常から離れて身も心もリフレッシュできる機会。冒頭の話と違い、今年の大型連休は一度きりだ。家族や友人と有意義に過ごしたい。5月6日の朝、気持ちよく日常に戻れるように。