<金口木舌>継がれる伝統


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 少し作業をしただけでも大変さが分かった。作業によってできるのはうま味のある塩。名護市我部の塩田で作られる「屋我地マース」だ

▼沖縄の製塩発祥の地とされる我部で途絶えた伝統的製塩法「入浜式」の塩作りを塩田(上地功代表)が復活させた。塩田に砂をまき竹でならす作業は、中腰が続いてつらい。炎天下、塩田での作業はいかに手間のかかる難儀な作業だっただろうか
▼地元の伝統を残すという使命感と地域おこしにつなげたいとの住民の思いから、作業が続いている。今では地域の文化に触れようと、園児や児童生徒が塩田を訪れ、塩作りを体験している
▼先日、「屋我地ひるぎ学園」の生徒が塩作りをした。屋我地小学校と屋我地中学校を統合し、4月に開校したばかり。学園の周辺はオヒルギなどマングローブが生息する干潟など豊かな自然が広がる
▼小中一貫教育校だけに、小学1年生からの英語教育など特色ある教育活動を行う。それに加え、島全体が国の鳥獣保護区という自然環境を生かした授業もほかでは体験できない魅力だ
▼29日の開校記念式典で児童生徒会長の大城理樹(りき)さんは「どこにも負けないような学校づくりを目指す」と宣言した。頼もしい言葉には地域、学校への愛着や誇り、責任感がにじんだ。それが地域の自然や文化を守る伝統を生み、継がれていくのだろう。