<金口木舌>社会を豊かにする人


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 一度は「20歳までの生涯と決めていた」と言う。エフエムコザでパーソナリティーを務めるまーちゃんは、男なのか、女なのか、二分類された性別に戸惑い、悩んできた

▼小学生時代に、そんな性をあざける同級生から「お前、まだ生きているの」。机の引き出しにはさみが何本も入れられたことも。中学時代は「半径5メートル内に近づくな」。存在否定と孤独。そんな仕打ちの数々にぐっと歯を食いしばって決めたのが20歳までの生涯だった
▼LGBTは同性愛者のレズビアンやゲイ、両性愛者のバイセクシュアル、生まれつきの性別に違和感を持つトランスジェンダーの頭文字を取って総称した
▼まーちゃんは男性で出生したが、性別の境界線上を行ったり来たり、時には境界線上にいたりする。LGBTは四つのカテゴリーだけで収まらない。さらに分岐して多様な性がある
▼少数者の性に向き合う友人がまーちゃんにはいた。「いつか認められる時が来る」。そんな言葉を支えに生き、高校時代、全校生徒を前に公表した。「歓迎と拒絶と半々だった」。そして今、生涯は「倍に伸びた」
▼きょうは憲法記念日。13条にこうある。「すべて国民は、個人として尊重される」。講演や相談を通して、同じ悩みを持つ人に向き合うまーちゃんは「個々の気持ちを尊重して」と言う。「私らしく」を貫く勇気が、多彩な生き方を提示し社会を豊かにしている。