<金口木舌>不便を売る


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 ドイツの光学機器メーカー・ライカカメラ社が近く液晶画面のないデジタルカメラを売り出す。「写真撮影に必須な本質的要素のみを厳選」とは同社ホームページの宣伝文句

▼撮った写真をその場で確認できる便利な機能をあえて外した。不便を売りにしているような新型機は予価87万円。これが商品として成り立つのもプロ、アマ問わず写真家を魅了してきたブランド力のおかげだろう
▼高価なブランド品を手にして得られるものは伝統に培われた信頼感や安心感、満足感だろうか。合理性や利便性を超えた価値がブランドには欠かせない。それを育むのも消費者の支持やこだわりである
▼農業や食、工芸の分野で「沖縄ブランド」の向上が叫ばれる。観光では「安・近・短」と呼ばれたお手軽な商品だけでなく、旅行好きをうならせる奇抜な新商品の開発が待たれる。それは観光客との知恵比べでもある
▼ブランドに磨きをかけるにも手加減に気を付けたい。過度に快適さや洗練さを追求すると、逆に魅力を損ねることもある。武骨で粗削りなところも残してはどうか。観光客は好奇心旺盛で、いい意味で欲張りだ
▼電子機器よろしく日々の暮らしも単調で誤差を排したデジタル化が進んだだけに、アナログ的感性も大事にしたい。「不便を売る」という妙手も考えてみよう。残り2日となった大型連休の宿題である。