<金口木舌>泥んこのすすめ


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 ゆっくりと体が沈んでいく。足の指と指の間に土がにゅるりと入り込む。この感触が気持ちいい。園児の田植え体験の取材で田んぼに入り、気付いた

▼年上の園児は生き生きと暴れていた。幼い子は一様に大泣きしている。汚れることに慣れていないというより、思い通りに体を動かせない独特の感覚に驚いたのではないか
▼泥に体を埋もれさせ、じっと動かない子もいる。保育環境論の塩川寿平さんは著書「どろんこ保育」で、そのような子を「体も心もどろんこに溶けていきそうな、そこだけ時間が止まったような姿」とする。癒やしを得ていたのかもしれない
▼稲作との深い関わりから、日本には泥にまみれる伝統的な祭礼や行事が多い。鹿児島県日置市の「せっぺとべ」や佐賀県鹿島市の「鹿島ガタリンピック」が有名だ。金武町で5日に開かれた「たんぼフェスタ」も8回目を数えた
▼子どもはもちろん、子と一緒に泥だらけで楽しむ親の姿も印象的だった。汚れることも含め、後のことを考えず体を動かすことは、ストレスのいい発散になっただろう
▼子どもが服を汚すことを嫌がる保護者もいる。だが、無邪気な笑顔から、服の汚れには代え難いものが得られていると感じた。フェスタの会場、ネイチャーみらい館では予約すれば「たんぼあそび体験」ができる。さあ、泥んこに体と心を委ねよう。