<金口木舌>「ウチナー魂」継承を


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 その男性は服をめくり上げ、腹に3発の弾丸を受けた時の傷痕を見せた。「傷は負ったが部下は1人も死ななかった」。ベトナム戦争で700人の兵士を率いる米軍曹として戦場で戦った

▼2011年に米ロサンゼルスで取材した北谷町出身の末吉栄さんだ。不動産事業で大成功を収め、1日120万円の収入を得る。その中から多額の資金を貧しい人や若者の学資支援に充てていた。「戦場の罪滅ぼし」と言う
▼波乱や逆境を乗り越えた末吉さんの数々の経験に、人生の輝きを見た。海外の取材では、そんなウチナーンチュに多く出会えた。彼らは開拓精神と、逆境を生き抜く気概にあふれている
▼国・地域は全く別でも「ウチナー魂」の要素が見事に共通していることにも驚いた。それは、ぬちどぅ宝(命こそ宝)、ちむぐくる(思いやり)、いちゃりばちょーでー(出会えば皆きょうだい)、ゆいまーる(助け合い)、祖先崇拝-の五つ
▼10月の第6回世界のウチナーンチュ大会への参加を呼び掛けるため、県の一行が北米を訪れている。本番では、海外県系人同士だけでなく、多くの県民が参加し交流する場にしたい
▼日本の若者の内向き志向が言われて久しいが、沖縄も決して例外ではない。世界の県系人からチャレンジ精神を学びたい。各地で育まれた「ウチナー魂」を再確認し、次世代に引き継ぐ機会にもしたい。