<金口木舌>うまみは足下に


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 「地魚」とはその地方の近海で捕れ、その地域の漁港に水揚げされた魚介類を意味する。日本の漁港近辺の漁村風景といえば、地魚を干し網に並べて乾物にする干物の光景が目に浮かぶ

▼山口県萩市で道の駅駅長を務める中澤さかなさんの発案で、地魚の干物作りがうるま市で進められている。沖縄では、こうした干し魚の風景が少ないことに気付き、始まったそうだ
▼タマンやガーラ、エーグヮーなど、比較的安価な県内の地魚は淡泊で水分が多く、干物に向いているという。魚介類は余分な水分を抜いて干物にするとうま味が凝縮して増す。沖縄の地魚はその点、うってつけの素材とか
▼中澤さんは言う。「(沖縄は湿度が高いなど)気候面の問題で干物の文化が薄いが、冷風乾燥機で作れる。色彩豊かな地魚の干物は県外でも売れる」。12日の試作品試食会で参加者は「予想以上においしい」と、その深い味わいに膝を打った
▼保存性の高い干物は素干しや塩干し、調味干し、薫製など種類も多彩だ。地域色を出すなら清酒の代わりに泡盛を、塩干しの際には地元の塩を使えば、地域にこだわった風味付けもできる
▼ドイツの哲学者ニーチェの言葉にある。「足下(そっか)を掘れ、そこに泉あり」。掘ってみて足下に潜在力があったことを示す好例である。知恵と工夫を加味すれば、ひらめきのヒントは地域にある。