<金口木舌>沖縄の発信力


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 「沖縄はもっと伸びるのに…」。日本通の中国人が歯がゆそうにつぶやいた。中国人観光客の「爆買い」現象に沖縄が乗り切れていないことを指してのこと

▼北京に住む彼が強調したのは沖縄の発信力の弱さだ。沖縄での宿泊1泊以上を条件に3年間は何度でも日本に入国できる数次ビザを、中国人はあまり知らないというのだ
▼富川盛武沖縄国際大名誉教授によると、沖縄を訪れた海外観光客の消費額は、訪日客1人当たりの観光消費額に比べて低い。専門家は潜在的需要に沖縄側が対応できていないと指摘する。外国人アンケートでは外国語対応能力やWi-Fi(ワイファイ)の利便性への不満が強い
▼琉大生らが琉球王国にまつわる世界遺産群をスマホで紹介するコンテンツを制作した。英語や中国語でも聞ける。外国人の立場に立った工夫と努力で一層の飛躍が望める。その一歩として期待が膨らむ
▼制作者の一人、宮城玲奈さん(琉球大4年)は「観光客の立場になって考えるいいきっかけになった」と語る。政治学者の姜尚中氏は「地域再生の鍵は若者、ばか者、よそ者」と説く。最先端の技術でニーズに応える若者の感性に期待したい
▼発信力が課題の今こそ、より魅力的に沖縄を描く演出家が必要だ。舞台に立つのは県民一人一人であることを自覚したい。演出家と役者がそろえば、飛躍が見えてくる。