<金口木舌>「まとも」を磨く


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 スイスの高級時計フランク・ミュラー社が商標登録侵害で訴え、特許庁が登録を取り消したパロディー時計「フランク三浦」

▼大阪の製造会社が取り消し無効を求めた訴訟で知財高裁は4月、「三浦」勝訴を言い渡した。「呼称は似るが外観で区別できる」「100万円超の高級時計と数千円の商品を混同するとは考えられない」。判決は買う側のまともな感覚に信頼を置いた
▼高級時計を発端にフランス検察当局が捜査するのが、東京五輪・パラリンピック招致委員会の不正送金疑惑だ。3年前、シンガポールのコンサルタント会社口座への送金と同時期に高級時計などを「爆買い」したのが、同社に関与するパパ・ディアク氏だ
▼父は国際陸上競技連盟のラミン・ディアク前会長で、国際オリンピック委員会委員も務めた。ロシア陸上界のドーピング隠蔽に関与したとされ、フランス検察当局が汚職で捜査している
▼招致委が広告代理店に実態調査を依頼したコンサル会社は、報道によればペーパーカンパニー。2億3千万円の送金を「正当なロビー活動費」と主張し、疑惑打ち消しに躍起だった政府や日本オリンピック委員会も渋々、調査チームを設置した
▼五輪招致の際、福島第1原発汚染水の状況は「コントロールされている」とした安倍晋三首相の“虚言”を忘れまい。笑えない嘘に気付くまともな感覚を大切に磨こう。