<金口木舌>沖縄の慟哭、政府の罪


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 広島平和記念公園にある原爆慰霊碑に「安らかに眠って下さい/過ちは/繰返しませぬから」という文字が刻まれている。碑が立ったのは原爆投下の7年後。広島大教授だった雑賀(さいか)忠義さんが編んだ碑文である

▼建立時、碑文は批判を浴びた。「過ち」の責任を誰が負うのか不明確だというのだ。広島市は「一個人や一国の行為を指すものではなく、人類全体が犯した戦争や兵器使用などを指している」と説明する
▼27日、オバマ大統領が広島を訪れる。慰霊碑の前にも立つだろう。英訳文の説明板もあるので、趣旨は理解できるはずだ。肝心なのは「過ち」の責任を自覚できるか、である
▼被爆者の多くはオバマ大統領の謝罪を求めてはいないが、米国が無辜(むこ)の民の命を奪った事実は消えない。せめて核なき未来を築くため被爆者の声を聞いてほしい。慰霊碑に向き合う姿勢が問われている
▼大きな「過ち」が沖縄で起きた。罪は一軍属にとどまらない。基地負担を強要し、犯罪抑止には無策だった日米両政府の罪は重い。しかも罪の自覚に欠けている。翁長知事が求めるオバマ大統領との面談に日本政府は否定的だ
▼軍属が女性を遺棄した恩納村の現場を県民が訪れ、花を手向けている。オバマ大統領、安倍首相に問いたい。沖縄の慟哭(どうこく)が聞こえるか。無念の死を遂げた女性のみ霊にぬかずき、わびるべきではないのか。