<金口木舌>差別と偏見はやめよう


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 電車に乗っていたイスラム教徒の女性が、かぶったスカーフ「ヒジャブ」をそっと外した。イスラム過激派の思想に傾倒する加害者による立てこもり事件が発生し、反イスラム感情の高まりが懸念されていた時期だった。豪州シドニーでの話である

▼乗り合わせた別の女性が、駅で降りたその女性を追い掛け「一緒に歩くからヒジャブを着けて」と声を掛けた。女性は涙を流して声の主を抱き締め、1人で去って行った
▼2014年12月、インターネットの短文投稿サイト「ツイッター」にこの話が投稿された。それを機に「私があなたと一緒に乗ります」というハッシュタグ(キーワードで検索できる目印)が付き、国内外で共感の輪が広がった
▼凶悪な事件が起きると、誰しも加害者への怒りの感情が湧き起こる。憎悪の矛先が加害者と近い宗教や人種の人たちに向かいがちな中、寄り添う姿勢を見せた女性の勇気は尊い
▼米軍属女性遺棄事件後、軍人・軍属を夫に持つ女性やその子どもたちに差別や偏見が広がっていないか懸念する。ただでさえ子どもは髪や肌の色の違いからいじめの対象になりやすい
▼最も心配されるのが加害者の家族だ。ある意味加害者の妻子も被害者である。あなたのそばにいる国際結婚をしている友人や外国人らに、豪州の女性のような気持ちで接しよう。彼ら彼女らに罪はないのだから。