<金口木舌>言葉に体温はあるか


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 県議選で、あってはならないことが起きた。県選挙管理委員会の集計ミスによって国頭郡区の当落が入れ替わるという前代未聞の事態である。両陣営は大混乱したのではないか

▼議席を失ったベテラン吉田勝広さんの心痛を思うと言葉を失う。当選した具志堅透さんも素直には喜べないであろう。両人に共通するのは同じミスを繰り返してはならぬという願い。それに県選管は応えてほしい
▼「われわれから『あなたは当選だ』と言ったわけではない」とは当山尚幸県選管委員長の弁。当確を報じたマスコミの責任を持ち出したが、違和感を拭えない。「ぬか喜びされたなら申し訳ない」というおわびの言葉には体温が足りない
▼こちらの体温のなさはお家芸だ。選挙後も菅義偉官房長官は「辺野古移設は唯一の解決策」といつものせりふ。中谷元・防衛相も「一日も早く辺野古に」と来た。他に言うことはないのだろうか
▼口癖のように連発する「再発防止策」にしても当てにはならない。翁長知事の言葉を借りれば、沖縄はいつも画餅(がべい)を押し付けられてきた。そんな政府の態度に県民が怒りを表明したのが今選挙であった
▼選挙結果を深刻に受け止めるなら、政府は安閑としておれぬはずだ。本気で日米地位協定改正に取り組んではどうか。街路灯の設置で満足するならば、それこそ冷淡な態度だと言うほかない。