<金口木舌>AI的情報処理、感情の混沌


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 運動記事は勝負に注力し、涙の裏話はほどほどに。諸先輩や同業記者の背を見て学んだ

▼山ほどある専門用語と規則を知り試合を把握した上で、選手の人物像や所属団体の情報から記事に合うものを取捨選択して短く、速く書く。とはいえ生身の人間が挑戦する姿に立ち会える喜びは限りない
▼例えば「七回2死二、三塁、7番古堅の値千金の右越え適時打で逆転した」の3行に野球独特の言い回し、なぜ値千金か、漢数字と洋数字の書き分けに込めた情報がぎっしり詰まっている
▼そんな運動記事は革新著しい人工知能(AI)の得意分野だそう。関連情報を入力したAIの解説は試合とほぼ同時進行で可能らしい。例えば同じ試合を見る人間の運動記者は得点の推移をノートに乱雑に連ねつつ、好プレーに激しく心揺さぶられもする
▼今やメールで部下の尻をたたく管理職AIも登場し、膨大な資料から賛否ある問題を判断して企業経営に役立てる技術も日本企業が開発済みだ。米軍基地や原発問題の判断も聞いてみたいところである
▼最近では世界的な囲碁の権威を倒した一方、ネットの言説をくんでヒトラーに賛同したり、オレオレ詐欺に悪用される懸念もあるという。人工知能学会倫理委は有害となる可能性に踏み込み平和や安全利用の倫理綱領をまとめる。その倫理、AIに尋ねたらどう答えるだろう。