<金口木舌>「平和への願い」つなぐ


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 23日の「慰霊の日」に、戦没者へどんな鎮魂の言葉をささげたらいいか-。戦後71年目を迎えた今年、そんな問いが頭の中を駆け巡る

▼そのヒントになる言葉がある。戦後70年の節目に託した平和への願いを71年以降に引き継ごうと始まった本紙1面連載「平和のうた」だ。印象に残ったのは、澤聖紫さん(71)の俳句「冬銀河地下に眠れる遺骨あり」
▼ことのほか味わい深い季語「冬銀河」は、銀河の中でも最も美しい、冬のさえ渡った輝きを表す。その輝きを平和への願いと重ね、今も見つかっていない犠牲者の遺骨に思いをはせる
▼拾骨されていない死者に終戦は訪れたのだろうか。さぞ無念に違いない。ましてや、骨の埋まる土地が軍事基地に使われている現状のままでは、2度殺されている気持ちかもしれない
▼澤さんは「地下の人々のみ霊は癒やされていない」と言う。祖父はどこでどう死んだか不明で、遺骨も見つかっていない。3月に亡くなった母は沖縄戦で深い心的外傷を負った。「沖縄はまだ平和ではない。安らぎと平和が来てほしい」と語る
▼「平和のうた」ではまた、伊波春七さん(12)の短歌「平和とは/キラキラ光る/幸せの/声とともに/生きるということ」に思わずうなずく。沖縄はその「声」を十分に出せているか。19日の県民大会は将来その平和を実現するための機会ともなる。