<金口木舌>18歳の権利を奪わないで


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 詩人・谷川俊太郎さんが詩を書き始めたのは18歳。その頃、書いた作品がある。〈トモカクモ満零歳カラ十八歳マデ/オモシロオカシクヤッテキタ/ナントイッテモ健康ダシ/心モ少シハ美シイ〉

▼「傲慢ナル略歴」という題だ。〈トモカクモ満十八歳カラコノ後モ/オモシロオカシクヤッテユク気ダ〉。詩集「十八歳」には、希望や抱負もあれば、孤独、内省もある。66年前の多感な18歳が見えてくる
▼時代が変わったとはいえ、夢や不安、悩みなどは今の18歳にも共通するだろう。その18歳を大人と認める「18歳選挙権」が19日導入される。7月10日の参院選で18歳、19歳が国政選挙にデビューする
▼共同通信の18・19歳調査によると、参院選の投票に「行く」56%、「行かない」12%、「今は分からない」32%だった。本番では投票率が上がると信じたい
▼一方で初の1票を行使できない高校生もいる。遠洋航海実習中の沖縄水産高生19人だ。総務省は「法改正がない限り難しい」と及び腰だが、1票の重みを軽んじてはいないか
▼先の調査では「日本の政治家を信用していない」が74%と高かった。投票できない生徒にとっては「お役所」も信用できない対象だろう。投票までに時間は限られるが、何らかの救済措置が欲しい。それが大人としての誠意ではないか。未来をつくっていく18歳の権利を奪ってはいけない。