<金口木舌>慰霊の日と参院選


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 ナチス・ドイツの収容所といえば、ポーランドのアウシュビッツ収容所が有名だ。しかしナチスの収容所はそこだけではない。ヨーロッパ各地に点在する

▼収容所にも、死が待ち受ける「絶滅収容所」と奴隷的労働が強いられる「強制収容所」があった。収容所はアウシュビッツだけ、と以前は思い込んでいた。似たような思い込みが沖縄戦でもある
▼1944年8月に米軍の魚雷攻撃で「対馬丸」は撃沈された。しかし沈められた船は「対馬丸」だけではなかった。42年ごろから南洋からの引き揚げ船など沖縄を行き来していた船が次々と撃沈されている。当時はかん口令が敷かれていた。戦時遭難船舶の実相については、今も詳細は明らかになっていない
▼学徒といえば、映画にもなった「ひめゆり学徒」が有名だ。しかし「ひめゆり」以外にも「梯梧(でいご)」「積徳」「白梅」「瑞泉」などの女子学徒に加え、鉄血勤皇隊として動員された沖縄師範学校や一中、二中、三中などの学徒があり、多くの若い命が失われた
▼戦後生まれが県人口の約9割を占めるようになり、沖縄戦体験者は年々減少している。「慰霊の日」を前に、新聞や文献を読み沖縄戦を学ぶ月としたい
▼ことしは「慰霊の日」の前日、22日が参院選の公示日となる。争点となるのは基地問題、憲法改正か。なぜ沖縄戦が起きたのか。選挙を通して、その答えも探したい。