<金口木舌>山の「通り会」


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 山道の途中、「桃太郎旗」が数カ所に並ぶ。「仲上原(ナカイーバル)通り会」とあるが周辺は、青々とした草木が生い茂るばかりだ

▼「通り会」は嘉津宇岳麓の市道約1・4キロ。過疎化を解消しようと名護市旭川仲上原の住民が2015年8月に立ち上げた。通りで行われた設立祝賀会で、参加者は「どこに飲み屋があるの」と口々に聞いたという
▼会長の大城英男さん(74)は金秀アルミ工業の元社長。会長就任後のことし3月、54年ぶりに生まれ島に戻った。ふるさとに恩返しをしようと村おこしに本腰を入れる。「観光道にしたい」という通り会の目玉は地域に眠る「宝」の数々だ
▼17日は通りにある「仲上原共同井戸」を掘り起こした。向かいには復帰前まで使われていた「タバコ乾燥場跡」も。地域住民のかつての生活をうかがわせる貴重なもので、いずれも市の文化財指定を目指す
▼通り沿いにさまざまな果樹、花木を植えたり、公園を設けたりするなどして、人を呼び込む考えだ。4月からは地域住民らによる観光ガイド養成講座も始まった。皆高齢だが意欲的だ
▼通りにぽつんと立つ「ニュース掲示板」が面白い。「フトモモ(フートー)を植えて『フートーの里』をつくろう」「『オキナワスズムシソウ』を植えて『コノハチョウ』を迎えよう」と貼り紙が並ぶ。足元の魅力を発掘する取り組みは夢と希望にあふれている。