<金口木舌>「ありがとう」


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 その日の「ありがとう」を毎日探して折り紙に書き留めた。すると「たくさんのありがとうがあることに気付いた」。沖縄女子学園(沖縄市)は家庭裁判所の保護処分で送致された少女が生活する。学習発表会(16日)で今の気持ちを伝えた

▼振り返れば「ありがとうと感じることも、言うことも少なかった」と言う。生活を見詰め直すと「掃除をしてくれて」「(家族が)心配してくれて」「トイレをきれいにしてくれて」と、さまざまな場面で多くの「ありがとう」が見つかった
▼少女の一人は福祉施設の奉仕活動で、その言葉の重みを知る。「頭を下げるのは悪いことをして謝る時ばかりと思っていた。奉仕で人からありがとうと頭を下げられた時にはうれしくて涙が出た」
▼ヒマワリの成長に命のありがたさを感じ、言葉を綴(つづ)った少女もいる。「声を掛けながら水をやると、うまく咲いてびっくりした。植物の命を感じ、大事な命と知った」
▼別の少女は特定の植物を育てるために、雑草を刈ることをためらった。「植物を育てるのも、その個性に応じた世話が必要。でも、どの命も大切。そう思うようになった」と
▼「ありがとう」は生命を授かる幸運が「有り難し」とされたことに由来し、感謝の言葉に転じた。有り難い人生の道は平たんばかりでなく、苦難もある。それでもめげずに、自らを支える一言を少女たちは得た。