<金口木舌>政治家の印象操作


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 劇場型政治が本格化したのは2005年ごろからか。「党をぶっつぶす」。ワンフレーズで大衆を驚かせ、選挙では対立候補に「刺客」を送り、政治をドラマ仕立てにして見せた

▼「小泉劇場」の主役・小泉純一郎首相の支持率は一時86・3%に上った。しかし政策論争を深めようとせず、巧みな印象操作で人気を得る手法は大衆迎合主義と批判された
▼米軍属女性暴行殺人事件がオバマ米大統領の広島訪問前に起きたことに、政府関係者が「最悪のタイミング」と言って問題になった。「最高の舞台に水を差す」と捉えたのだろう。安倍晋三首相は首脳会談で事件を取り上げ、問題解決に取り組む姿勢を演出した
▼ある東京の元政治家秘書はこう分析する。「メディアの関心はその後一気に大統領の広島訪問に注がれた。国民の多くは沖縄の事件は終わったかのような印象を受けただろう」。県が求めた大統領への直談判や日米地位協定改定には“ゼロ回答”だったにもかかわらず
▼東京でメディアに接していると、沖縄の基地問題の扱いが小さいことに驚く。19日の県民大会は「超党派ではない」などと、矮(わい)小(しょう)化したい認識が政治家やメディアの中にある
▼政治家が印象操作に腐心し、解決への約束が劇の一場面限りの演技であっては困る。米軍関係事件は続いている。改善できないのなら「茶番劇」といわれても仕方ない。