<金口木舌>壊憲記念日に


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 〈「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日〉。軽やかな言葉遣いが人気の俵万智さんの短歌だ。これをもじった歌がある。〈憲法を解釈だけで変えられる だから七月一日は壊憲記念日〉

▼社会学者の上野千鶴子さんが怒りを込めて詠んだ。2年前のきょう、安倍政権は憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定をした。昨年秋には安全保障関連法を強行採決し、今年3月施行された
▼改憲を正面から国民に問わず、一内閣だけで日本の針路を大転換させた。今回の参院選は、改憲勢力が3分の2を占めるかが焦点だ。だが、首相は遊説で改憲に言及することはほとんどなく、争点化に及び腰だ。野党も憲法論戦の土俵に対戦相手を上げ切れていない
▼2012年衆院選の後に特定秘密法、14年衆院選後には安保法と、この政権は選挙中は強く訴えなかったことを強行突破する手法を繰り返してきた
▼英国の国民投票では後悔するEU離脱派が増えているという。「EUへの負担金を医療財源に充てる」「移民を制限できる」。離脱派政治家が投票前に訴えていた公約のうそが次々と発覚し始めた。後の祭りだ
▼参院選も一人一人の1票が大きな意味を持ってくる。英国を他山の石として、甘い言葉の裏に潜む「不都合な真実」を見極めたい。7月10日はこの国の明日を決める記念日。