<金口木舌>恥の文化と社会保障制度


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 「日本人は罪の重さよりも恥の重大さに重きを置く」と指摘したのは「菊と刀」の著者ルース・ベネディクトさん。日本人を「他人の判断を基準にして自己の行動の方針を定める」と分析した

▼「恥」を意識しがちな日本人気質が、先の大戦では裏目に出た。「生きて虜囚の辱めを受けず」との戦陣訓が兵士らの自死、ひいては住民の「集団自決」(強制集団死)を誘発したとも考えられている
▼小中学生の給食費や教材費などを行政が補助する「就学援助」を受ける際、県内の一部自治体で民生委員の所見を条件にしていることが分かった。申請する側に寄り添っていると言えるだろうか
▼家庭事情は、他人に知られたくないことの一つだろう。恥を意識する社会で、所見を求めることが結果として申請控えにつながらないか心配だ。子どもの学ぶ意欲をそいではならない
▼生活保護を必要とし、実際に受けている人の割合は県内で11・5%しかない。約9割は受けられるのに、受けていない。以前、厳しい経済状況にある女性に保護を受けない理由を聞くと「自分より厳しい人は他にもっといる」と答えた。それだけではあるまい
▼生活保護、就学援助ともに他人の判断基準や羞恥心が申請をためらわせている現状がある。「恥」と思わせる社会はまっとうとは言えない。当たり前の権利を行使できる社会でありたい。