<金口木舌>壊れたベンチ


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 「学校の帰り道にいつも通っていて悲しいです」。子どもらしい字で書かれた素直な切迫した訴え。はがきを手にした名護市東江区の津波一夫区長は、冒頭の1行に心をつかまれた

▼送り主は名護市立東江小学校5年生の大浜梨桜菜さんと2年生の梨々華さん姉妹。読むと、「悲しい」のは通学路にあるベンチが壊れているからだと分かる。お年寄りが座りづらそうにしているのを見て「かわいそう」だから「直して」という内容だ
▼区も予算は潤沢ではない。だが「何とかしないといけない」と思った区長はすぐに対応できる方法として廃材の利用を思いつく。業務終了後の時間を利用し、3日かけベンチを直した
▼母親の尚子さんが姉妹にはがきを送ることを提案した。「書こうか」と申し出たが、姉妹がすすんで書いた。心を込めた訴えを受け止め対応してくれる大人がいたことは、姉妹の大きな財産になっただろう
▼区長と姉妹の対面を取材したこの日、名護特別支援学校で開かれた主権者教育の特別授業を取材した。授業では「政治」参加の大切さが分かりやすく説明された
▼「政治」は難しいものではない。身の周りの課題を解決し、よりよい社会を実現させることは政治の果たす役割だ。姉妹の「はがき」も立派な政治参加と言える。選挙で投じる1票は社会をよりよくすることにつながる。しっかり生かしたい。