<金口木舌>沖縄は見せない?


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 スポーツ紙の芸能面やネットのエンタメ情報を見ていると、時折「爆音BGM」という珍妙な言葉に出くわす。記者会見でタレントの都合の悪い質問がリポーターから出た途端、BGMの音量を上げ、追及を阻むという

▼ゴシップ絡みの厳しい質問からタレントを守る芸能事務所の苦肉の策である。真相を知りたいリポーターには迷惑千万な話。タレントは涼しい顔で会場を去り、消化不良のまま会見は終わる
▼こちらはどうだろうか。ある週刊誌の川柳コーナーに「舛添で 沖縄見せぬ テレビ局」という一句を見つけた。説明は要らないだろう。「座布団1枚」並みの戯(ざ)れ歌なれど、笑うわけにはいかぬ
▼前都知事の不祥事をBGMに比しては都民は不本意かもしれぬが、沖縄の声が伝わらない理由がここにある。大物政治家の動向や、聞き心地のよい政府高官のささやきに中央メディアの関心は向く。かくして沖縄の声はかき消される
▼これは幾度も沖縄が経験してきたことだ。だからこそ、数万人参加の県民大会を重ね、動かぬ政府を揺さぶってきた。永田町や霞が関かいわいの住人はじめ、国民多数を沖縄に振り向かせるのは労力が要る
▼参院選の投開票日が近づいてきた。各党中央の拡声器が幅を利かしているが、沖縄の声がかすんでは困る。辺野古や日米地位協定をもっと論じてほしい。憲法もお忘れなく。