<金口木舌>EU離脱の結末は


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 誰も予想できない驚きの結末。それは見てのお楽しみ-。映画の宣伝ならいいが、現実世界ならどうだろう。ここまで目算が狂うと、もはや悲劇か

▼英国民投票でEU離脱派が勝った後の混乱が収まらない。想定外が想定外を生む“誤算の連鎖”が生じている。まずはキャメロン首相の誤算。勝って離脱派を封じ込むもくろみは外れた
▼首相の辞任表明で生じた政治空白は混乱を一層助長している。英国の混乱を反面教師と見たか、予想されたEU参加国の「離脱ドミノ倒し」の動きよりも、欧州結束派の巻き返しが目立つ。離脱派の相次ぐ公約撤回も大きな誤算
▼離脱派はかつての強い「大英帝国の復活」を目指した。だが狙いに反し、各地の独立派が勢いを増したことが最も大きな誤算だろう。今の連邦さえ崩壊の危機に直面しようとしている
▼「次はEU離脱のタイミングだ」。2014年のスコットランド独立住民投票を取材した時を思い出した。独立派は敗れた翌日、既に狙いを定めていた
▼案の定、その時に反対票を投じた人々にも今は共鳴が広がり、独立が一層現実味を帯びてきた。離脱派が描いた、映画のようなハッピーエンドの筋書きはさらに遠のく。離脱を離婚に例えて夫婦が「やり直そう」と復縁する場面を期待する声もあるが、投票結果は重く、時既に遅し。現実世界の結末は映画より奇なりか。