<金口木舌>腐らない食べ物


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 米国で昔から食されている有名菓子がある。甘いクリーム入りのスポンジケーキで、80年以上前に発売され、家庭では定番の味だそうだ。米テレビ局ABCが先日、こんなニュースを報じた

▼メーン州の高校の授業で、食品添加物の実験として、この菓子をガラスケースで保存することにした。だが、なかなか腐らず、実験を始めた教員は退職した。代々引き継がれ、今年40年を迎えた。今なお原型をとどめているという。ぞっとする話だ
▼私たちの周りにもさまざまな加工食品があふれている。流通の発達で食環境が変わり、遠くの物が容易に味わえるようになった。長く日持ちするよう、自然の味に近づけるよう、製造工程で人工的な処理が施された食品も多い
▼インスタント食品やファストフードなどは確かに便利だ。忙しい現代人にとっては、手軽に調理できる利点もある。大量製造、広域流通の時代に、全てを排除することは現実的には難しい
▼かといって、むやみに過剰摂取するのは避けたい。口にするものに何が使われているかを吟味した上で、選択するのが賢い消費者だろう。食べ物との距離が近い地産地消が安全、安心なのは言うまでもない
▼中国を統一した始皇帝は「不老不死」の薬を求めた末、水銀入りの薬を飲んで死期を早めたとの伝説がある。米国の「不朽不滅」の食品から学ぶことは多い。