<金口木舌>制度のはざまで投票できず


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 「私、今回の参院選、投票権がないんです」。そう訴える後輩の話を聞くと、彼女は4月1日に那覇市に引っ越してきた。3カ月居住していれば投票権があると思っていたが、3カ月とは公示日前日の6月21日までの期間という

▼さらに那覇市に移る前、2月と3月に1度ずつ引っ越しをし、そのたびに住民票を移した。那覇市に来る前の県内自治体では1カ月間しか住民票を置いてなかったため、選挙人名簿には載っていない
▼2月末まで住んでいた県外自治体では引っ越し後も4カ月は投票権があったが、6月28日で名簿から抹消された。沖縄で不在者投票という選択肢もあったが、県外から投票用紙を郵送してもらうなど手続きが必要。その制度はほとんど周知されていない
▼3カ月以上の居住の条件は、特定の候補者を当選させる目的で住所変更するのを防ぐためとされる。しかし今回の選挙は国政選挙だ。自治体の首長選挙や議員選挙ではない
▼県内の住所変更であれば、選挙区は同じなのだから居住期間を問わず投票権があってもいいはずだ。海洋実習に出ている18歳の水産高生だけでなく、制度のはざまで投票権を逸する人がいる
▼きょうは参院選の投開票日。投票率の低迷が続いているが「投票しても変わらない」ではなく、「投票しなければ何も変わらない」。そのことを肝に銘じ、投票できない人の思いも託そう。