<金口木舌>働く幸せ


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 自らの進路を決めた時には、いつも優しい祖父母の姿が目に浮かんだ。沖縄高等特別支援学校(うるま市)の3年生保海誠さんは進級した1学期、嘉手納町の高齢者福祉施設に就業体験で2週間通った

▼7日に同校で開かれた報告会の際に話を聞くと、仕事への思いは、祖父母や家族との触れ合いから育まれた。「お年寄りと会話をして、笑顔を見るのが好き。それでこの職業を選んだ」
▼体験当初は緊張してうまくいかず、立ちすくむこともあった。それでもいちずに働いた。すると「頑張ったね」の声が掛かり、頼まれた仕事をやり遂げる自信になった。「とてもうれしかった」。見守る人々のさりげない一言に元気づけられた
▼人間の幸せは、人に愛され、褒められ、役に立ち、必要とされること。チョークの製造会社日本理化学工業(神奈川県)の会長大山泰弘さんが著書「働く幸せ」に書いている
▼大山さんの会社は障がい者雇用の先駆けといわれる。共に働き、多くを教わった。「人間の幸せは、働くことによって手に入れることができる。このシンプルな真理に気づかせてくれたのは彼らでした」
▼報告会では21人の生徒が発表した。失敗あり、反省しきりの一方で、褒められ、喜ぶ初々しさは働く原点を思い起こさせる。今後も悩みは尽きぬだろう。それでもめげずに働くことを通してたくさんの幸せがあるようにと願う。