<金口木舌>コーチャンの涙


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 沖縄ロックを代表するドラマーの長濱浩二さんが亡くなった。土砂降りのピースフルラブ・ロックフェスティバル初日を見届けるように。雨音の向こうで響くビートは耳に届いただろうか

▼愛称コーチャン。有名バンドを渡り歩き、最後はJETでドラムをたたいた。ベースの古堅喬さんは「ピースフルを楽しみにしていた。病室でもスティックを握っていた」と明かす。「悲しいけど、本人は人生をエンジョイしたと思う」
▼4年前、ピースフルの30年を記念する座談会に出てくれた。饒舌(じょうぜつ)ではないが音楽への情熱が伝わってきた。「国境のない音楽を通じて、平和をつくりたい」とも語った。なじみの米兵客の戦死を見てきた
▼そんな長濱さんは1995年7月、阪神大震災チャリティーライブの実行委員長として奮闘した。テレビで被災地の惨状を知り「ただごとじゃない。助けることはできないか」と立ち上がった
▼腕利きのドラマーを慕い、ピースフルの常連バンドが出演した。よほどうれしかったのだろう。終演間際、舞台に呼ばれた長濱さんは両手で顔を覆い、人目をはばからず泣いた
▼それから21年、今度は音楽仲間が涙を拭った。病室でリズムを刻んだスティックを握り、古堅さんはコーチャンの魂と共にステージに上がった。平和を見詰めた音楽人生最後のライブ。ピースフルにふさわしい共演だった。

※注:長濱浩二さんの「濱」は、右側がウカンムリに「眉」の目が「貝」