<金口木舌>健康長寿の秘けつ


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 先日、85歳を迎えた叔母のトゥシビー祝いに出席した。家族や親戚が皆、あいさつの言葉に込めたのは叔母への「感謝」。長生きを祝うだけの場ではなかった

▼この統計を見て、長生きだけを喜んでいられないと思った県民は多いだろう。65歳平均余命のうち、介護を受けないなど健康な生活を送れる期間を示す「健康寿命」の割合は、全国で沖縄は男性最下位、女性46位だった(本紙6月12日付)
▼女性1位の静岡県で「お達者度」県内1位の森町は「きょういく」と「きょうよう」を重視する。教育と教養のことではない。「今日、行くところがある」「今日、用がある」の意味で、居場所や人との対話が健康長寿の秘けつという
▼群馬県の元教育長で国頭村出身の山川武正さんは健康長寿の見本になる。満102歳を過ぎて随想録「なんくるないさ」を出版した。定年退職後3冊目で、書くたび「自分発見の連続」だという
▼90歳から短歌を始めた。自宅近くの沖縄料理店で若者らと酒を酌み交わすのも楽しみの一つ。随想録の最終章「感ありて謝あり」は、出会った人々や家族へのお礼の言葉であふれる
▼周囲への感謝の気持ちこそ、人と人を結び、助け合い、孤立しない社会につながる。90歳を過ぎて「老後が心配」と言う人に「いつまで生きているつもりだ」と発言した閣僚には、想像も及ぶまい。