<金口木舌>不条理劇に終止符を


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 愕(がく)然とした。既視感という言葉では収まりがつかぬ。機動隊による県道70号の封鎖である。ヘリパッド建設のため住民を県道から閉め出す。こんな不条理劇は前世紀で終わったのではないのか

▼演習のたびに生活道路を封鎖する。県道104号越え実弾砲撃演習が終わったのが1997年春であった。日本本土への分散移転が決まったのである。ヘリパッド建設と同様、SACO合意による措置だった
▼演習を幾度か取材した。平和団体の抗議行動に顔を出した後、金武の繁華街にほど近い丘に上る。山肌に白煙が上り、さく裂音が響き渡る。目と耳でそれを確認して社に戻る
▼抗議団が着弾地点に潜入し、身を張って演習を止めたこともある。キセンバル闘争と呼ばれていた。いま考えても異常な演習だった。細長い島にある県道の上を砲弾が飛んだ。昔の話ではない。たかだか20年ほど前のことである
▼住民を県道から閉め出す米軍の無神経さは安倍政権にも引き継がれ、凶暴さを帯びた。機動隊員で県民を排除し、演習場を造るというのが日本政府の意思だ。「基地の負担軽減」を名目にするのだから、たちが悪い
▼生活道路を封鎖する演習は米本国では許されまい。同様に幾百の機動隊員で県道を封鎖する行為も今、日本本土で許されないであろう。それを沖縄のみに強いる。こんな不条理劇はやめにしようではないか。