<金口木舌>震災と障がい者


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 2度目の揺れが襲った時「もっと大きいのが来るのでは」と不安に駆られた。ヒューマンネットワーク熊本の事務局次長、植田洋平さん(26)=熊本市=が熊本地震の際に襲われた恐怖感だ

▼筋ジストロフィーなどの障がいがある植田さんは24時間介護を受ける。県自立生活センター・イルカ(宜野湾市)の自立生活塾で「震災と障がい者」について講演し「災害に備えたシミュレーションを早急に」と提言した
▼避難所の中にはバリアフリー化されていない所もあり、夜通し車中で過ごした障がい者がいた。仮設住宅もバリアフリー化されておらず、生活するには厳しい。介助のヘルパーも被災した。身近で多くのことがあった
▼介助制度の周知不足もあった。避難入院した病院でも本来、ヘルパーの介助が受けられるのに頼めるようになるまでに日数を要した。完全看護の病院で介助を受ければ公費の二重取りになるとの誤解が原因だ
▼震災時は障がいのない人も気持ちの余裕を失いがちになる。自力で避難するのが難しく、支援を要する災害弱者の困難は想像に難くない。植田さんは「熊本地震を最後にしたい」と願う
▼福祉避難所などインフラ整備や避難手段、被災後の支援策には災害弱者の視点が欠かせない。それを基本に据えることで、被災の最小化につながる。不安が続く被災地が発信する教訓である。