<金口木舌>マンタは近場が好き?


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 雑誌「ナショナルジオグラフィック」日本版サイトが「マンタは大回遊せず」という研究成果を紹介している。遠い海で泳ぐより、すみか周辺を好むという。移動距離は直径220キロの範囲内

▼米カリフォルニア州の海洋研究所が人工衛星でマンタを追跡した。数千キロの大海原を乗り越える雄大な姿を想像していただけに意外だ。職場と自宅を忙しく行き来する勤め人のようで、ちょっといじらしい
▼たまには大海に飛び出したい。狭い地域でつつましく暮らす中年男は心ひそかに思う。水族館をすみかとし、水槽内をゆったり泳ぐマンタに聞いてみたい。居心地はどうですか
▼子どもたちは海や山を存分に駆け回っただろうか。いろんな思い出が絵日記につづられていよう。楽しかった夏休みはいよいよ終盤を迎えた。部屋にこもって、宿題の追い込みに励む子もいるはずだ
▼テレビの向こう側は自由な広野か、しきたりだらけの息苦しい空間か。国民的アイドルSMAPの解散発表に驚く。芸能界を長年泳ぎ続けるうちにひずみが生じたのだろうか。固い紐帯(ちゅうたい)を解くしかなかった
▼マンタの行動範囲や、しがない勤め人の愚痴もきっとお見通しのはず。ご先祖さまと過ごした旧盆も、きょうウークイを迎えた。国に振り回されっ放しの島々の未来はどうだろう。そう問い掛けながら、無限の天空へ祖霊を静かに送りたい。