<金口木舌>キジムナーと王子


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 砂を集めて小山をつくり、棒を1本突き立てる。後ろを向いて名前を呼び、しばらくして確認すると足跡が付いている。地域で方法は違うが、呼ばれたのはキジムナーだ

▼街の真ん中に堂々と立つ名護市の「ひんぷんガジュマル」。眺めるうちにキジムナーが出てきそうな感覚にとらわれ、数多い目撃例を調べたことを思い出した。呼び方は昔、子どもたちが行っていた遊びだと聞いた
▼名護市観光協会が行う「名護まちなか散策」で参加者を案内する「名護さくらガイド」は、「ひんぷん」には「12人のキジムナーがいる」と紹介する。「ひんぷん」は琉球時代、蔡温(さいおん)が樹下に置いた石碑の別名「ヒンプンシー」に由来するという
▼樹齢300年以上と言われる大木が悠々と枝を伸ばし、どっしりと根を張る姿は味わい深い。毎年選ばれる「名護がじゅまる王子」は名護市のPRを担うが「ひんぷん」の保全啓発も役割だ。2002年に台風の影響で南西方向に傾き、11年に本格的な対策が行われた
▼「王子」の研修では「ひんぷん」の守り方を議論した。道路の中央にあるため、保全対策はまちづくりのビジョンにも関わる。「王子」らが熱く語る姿が頼もしかった
▼若い世代が地域に愛着を持つことは大切だ。市内に住む若者もぜひ「散策」を体験してほしい。「ひんぷん」に住む12人の木の精霊も強く望んでいるはずだ。