<金口木舌>不磨の大典


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 ワンセグ付きの携帯電話を持っていても、受信料契約の義務はないと判断した先月末のさいたま地裁判決が波紋を広げている。NHKは控訴し、総務省は実態調査を始める。手に収まる携帯電話が受信料の対象だと初めて知った人もいよう

▼ところでラジオ受信料をご存じだろうか。1950年施行の放送法に基づき、NHKがラジオの受信料を徴収した時代があった。米統治下の沖縄では縁の薄い存在だった
▼廃止は68年。テレビの普及が進み、ラジオ単独の受信契約者が減っただめだ。国会では60年代初めからラジオ受信料の存廃を議論している。中でも持ち歩けるトランジスタラジオは悩みの種だったらしい
▼NHKの参考人は60年3月の国会で「トランジスタラジオは払わなくてもいいんだという気持ちが蔓延(まんえん)している」と答弁した。小型ラジオは受信料の対象ではないと考えた人もいたようだ
▼いつの時代でも、既存の法制度と懸け離れた実態を放置すると、無視できない矛盾が生まれる。必要なら制度を見直すべきだが、現実を安易に追認するだけでは矛盾は解消しない。それを誤ってはならぬ
▼主権国家にそぐわない日米地位協定の見直しに尻込みしながら、「時代に合わぬ」とばかり改憲を唱えるのは、いかにもちぐはぐだ。憲法を改め、不平等協定が「不磨の大典」扱いでは済むまい。その害悪は明らかだ。