<金口木舌>農業女子


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 福島県の農家の女性が言う。「都会は、玄関から一歩出っと金かかるべ。ここは一歩出っと、晩のおかずが採れるんだ」。写真家芥川仁さんとライター阿部直美さんの共著「里の時間」の一文だ

▼5月上旬。八重桜などが花をつける。畑の道端には山菜の「コゴミが顔を出している」と。都会と農村。どちらが豊かなのかは簡単には決まらないものの、郷愁に誘われる人もいよう
▼うるま市農業委員会によると、県内で女性就農希望者が増えつつある。中部で昨年度の販売農家の農業就業人口は2462人で、うち女性は852人と10人に3人。就農相談もあり手応えがある
▼そんな希望者に向けた討論会がうるま市であった。「輝く農業女子」をテーマに5人が登壇した。悪戦苦闘は都会も農村もない。悩みもある。虫害で出荷できず「どう食べたら」。収入が減り「何に転作したら」
▼半面、喜びもある。市石川楚南で就農6年の国吉千景さんはベビーカーと共に収穫した。「子どもと一緒に畑で楽しんだ。女性には素晴らしい仕事」。学校の食育にも携わり児童の喜ぶ顔がうれしい
▼「里の時間」には高知県の農村も描かれる。農作業に精を出しつつ季節をめで、酒を飲む時は2、3日に及ぶ人も。農閑期も働きづめだった女性にとって、そんな呑気(のんき)な地域が誇りだ。「暮らしにメリハリがあったんだわ」。豊かな時の流れがうらやましい。