<金口木舌>第二の阿麻和利プロジェクト


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 「勝連町史二」に収録された古謡集「おもろさうし」現代語訳がロマンをかき立てる。「勝連城は太陽に向かって城門を開き黄金財産のつまった御殿である。これは今も昔も、すぐれた按司(あじ)がいたおかげだ」

▼勝連城は11~12世紀に築城された。15世紀の城主阿麻和利は奄美大島のほか、東南アジアなどと貿易を進めた。人々から慕われ、伊波普猷は「沖縄最後の古英雄なり」と評した
▼勝連城の繁栄や盛んな交易の様子の「おもろさうし」の記述はまだある。「勝連は、京、鎌倉のように栄えている」「大和、唐、南蛮から宝物が集まって来る」
▼3~4世紀のローマ帝国や17世紀のオスマン帝国時代のものとみられるコインが勝連城跡から国内で初めて出土した。だが、いずれのコインも築城から廃城の前後の鋳造である。勝連城とは時代的なずれがある
▼城の盛衰に関わらず、勝連半島では貿易港が機能していたとみえる。太平洋の大海原を眼前に「万国津梁」の気概が勝連地域にあり、阿麻和利のような英雄を誕生させたとみることもできる
▼勝連城跡を背後に臨む中城湾港では今、企業の集積が進む。外国旅客船の寄港受け入れも始まった。「第2の阿麻和利プロジェクト」と言えないか。世界を視野に繁栄を築いた先人の気概が根付く地域である。コイン出土を地域に勇気や希望を再び呼び覚ます機会にしたい。