<金口木舌>運動会の秋


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 グラウンドから聞こえるにぎやかな音楽に誘われ、久しぶりに小学校の運動会を観覧した。運動場は在校時と変わらないが、児童席のテントの外側を保護者が自前で据えたテントが取り囲んでいる。40年前にはなかった光景だ

▼最近では5月開催の運動会も増えたが、やはり秋がいいなと思う。幼いころに歌った運動会の歌の一節「そよ吹く風も心地よく」は秋空に似合っている。弁当のおにぎりも、この季節が一番うまい
▼体育館の壁には「チバリヨー」と大書した横断幕が張ってある。当方が小学生だった1970年代は「共通語励行」「しまくとぅば継承」のいずれもなかった。時代の変化を横断幕の文字に見る
▼切ない思い出がある。小学校1年の9月、塀から落ちて右腕を骨折し、ギプスを巻いて運動会に出た。ラジオ体操がつらかった。腕が真っすぐに伸びないのだ。駆けっこも苦手だった。運動会が近づくと憂鬱(ゆううつ)になった
▼子どもたちを取り巻く環境が厳しさを増している。家庭の事情もあって運動会は嫌だという子もいよう。せめてこの日ばかりは心細い思いをさせてはいけない。おにぎり1個が心の支えになることもある
▼秋台風は沖縄から去った。学校は暴風で荒れた校庭の後片付けに大わらわだろう。これから運動会という学校もあるはずだ。澄み切った秋空と一緒に子どもたちの笑顔を迎えたい。