<金口木舌>いじめ対策は子ども目線で


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 どん底の孤独感とはどんな世界だろう。「一人ぼっちでたたずむ僕を/消しゴムで消せたらいいのに」。歌「とべない鳥」の一節を聴いて、そう想像した

▼いじめをなくす活動に取り組む歌手の玉貴(たまき)さんは自身のいじめられた経験を基に歌詞を書いた。「いじめられている子は自分がなぜこんなに孤独なのか、自分の存在の意味も分からなくなる」と語る
▼先月28日、いじめ防止対策推進法施行から3年を迎えた。この間もいじめによる、児童・生徒の自殺は起きている。県内では、子どもが学校のアンケートに「いじめられている」と訴えていたにもかかわらず、担任教師が深刻な訴えを抱え込み、学校として対応できなかった例もある
▼政府はいじめや不登校対策として前年比20億円増の77億円を来年度予算に盛り込む方針だ。公立小中学校の教員定数を10年間で約3万人増やし、いじめなどの対応を充実させるという
▼引きこもりの子と徹底的に向き合う熱血教師を取材したことがある。彼は「時間をかけて心を開く関係をつくることが大切だ。『先生あのね』と発する一言が鍵」と言う
▼信頼関係と、サインの感知に懸かっている。先の歌詞は1番はいじめられる側、2番はいじめる側、3番は傍観する側の目線で書かれている。学校現場の予算や人を増やすのなら、それぞれの目線で対策を打つ態勢を築いてほしい。