<金口木舌>おにぎり捨てますか


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 おにぎり1~2個を1年間毎日捨て続けてください。こう言われたら、何をばかなと拒むだろう。しかし残念ながら、計算上は全国民がそれを実行しているのが今の日本だ

▼食べられるのに捨てられてしまう「食品ロス」の国内量は年間約500万~800万トン(2010年農水省統計)。1人当たりに換算すると、おにぎり1~2個に相当する。世界の食料援助量の年間約400万トンを軽く上回る
▼家庭での賞味期限切れや食べ残し、店頭での売れ残りなどによって、食べ物をごみに変えてしまっている。昨年の農水省調査では、宴会で14%、結婚披露宴で12%の食べ残しがあった
▼宴会の食品ロスを減らそうと、長野県松本市は11年から「30・10(さんまる・いちまる)運動」を始めた。宴会開始後30分間と終了前10分間は席に着き、料理を味わおうという呼び掛けだ。食品廃棄が半減した店もあり、効果は上々だ
▼「30・10運動」は全国に広がり今や約20自治体が取り組んでいる。“もったいない”の意識は日本にとどまらない。フランスでは今年2月に大型スーパーの食品廃棄を禁じる法律が成立した
▼国連によると、世界で飢餓に苦しむのは9人に1人。一方で先進国は飽食をむさぼる。食品ロスの半分は家庭から出たものだ。買い過ぎや冷蔵庫の詰め込みなど日常を見直すだけで、地球市民として小さな務めを果たせる。