<金口木舌>既定路線を覆す小池都知事


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 1989年に着工した長崎県の諫早干拓は、漁業者が工事中止を求めた訴訟により、一時中断されたものの2007年に完成した。農地造成が目的で進められた事業で、総事業費は2500億円に上る

▼群馬県の八ツ場(やんば)ダムは、民主党政権下で一時凍結された時期もあったが、計画浮上から60年たった昨年1月、本体工事に着手した。完成は19年度を予定している
▼両事業は無駄な公共工事と批判があった。しかし一度決まった公共事業はなかなか後戻りできず、粛々と進むことを示した。「上が決めたことには逆らえない」-。そんな定説を覆しているのが小池百合子都知事である
▼豊洲市場の移転を延期、経緯を追及し責任者の市場長らを更迭した。東京五輪についても、コスト削減のため三つの競技会場を見直す姿勢だ
▼テレビのワイドショーも連日“小池劇場”が席巻している。都議会からリポーターが中継するなど、国会中継より注目を集めた。既定路線を覆す果敢さと、落としどころが見えない問題への挑戦、小池知事の歯切れの良い発言が期待感を高めている
▼一方、普天間飛行場の移設先の名護市辺野古や、米軍北部訓練場のヘリパッド建設で、安倍政権は基地反対の圧倒的な民意を無視し続けている。基地ありきの既定路線を覆せるか。翁長県政の挑戦からも目が離せない。