<金口木舌>「逃げる恥」より「逃す恥」


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 仕事を聞かれ、こう答える。「プロの妻です」。そんな光景が出現するかもしれない。放送中のテレビドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」を見て想像した

▼県出身女優の新垣結衣さんが主人公を演じる。大学卒業前の就職活動で内定をもらえず、大学院に進学して再挑戦するが全滅。派遣社員となるも、雇い止めに遭う。仕方なく独身男性の家政婦を始め、ついにその男性に「妻として雇ってほしい」と頼むに至る
▼互いに「契約結婚」(事実婚)を約束する。一抹の不安を抱く主人公を男性はなだめる。「私はプロの独身ですから」。一見、非常識だが、就職難が深刻化した現実社会を映す
▼現実の苦境は世代・性別を超えている。20~50代の男性有業者のうち、ワーキングプアと呼ばれる年収200万円未満の人が占める割合は、1992年の8・8%から2012年は13・3%に増えた
▼35~44歳のアラフォー男性で見ると、4・9%から8・7%に上昇。中でも沖縄は24・2%から29・6%に達し、突出した状態が続く。働き盛りの世代で非正規社員が急増中だ
▼その影響は大きいだろう。消費は落ち込み、景気は上向かない。結婚は避けられ少子化が進む。結果的に増税を生み、次世代につけが回る。負の連鎖を断ち切るには、中途採用の拡大など変革が必要だ。働き盛りを「逃す恥」を社会全体で考えたい。