<金口木舌>親戚捜しと旧姓使用


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 ウチナーンチュ大会に参加している県系人が親戚を探しているという記事を機に、対面を果たすケースが相次いでいる。親戚からの連絡というより、その周りの知人からの情報提供が多いようだ

▼読者から電話があり「親戚を探している人の記事にある、祖父母と同じ名前のパスポートの資料写真が字誌に掲載されている。明日なら協力できる」との申し出があった。見ず知らずの人のために力になろうとするウチナーンチュの肝心(ちむぐくる)が、対面を後押ししている
▼池原は「イキアラ」、上地は「ウイチ」-。ニューカレドニアからの参加者の名字は、若干変化を遂げているが、沖縄由来の姓と分かる
▼名前や出身地は親戚を探す上で鍵となる。アイデンティティーの核でもある。ニューカレドニア県系3世のベルナール・イキアラさん(63)も祖父の名前を手掛かりに、いとことの初対面を果たした
▼それを考えると去る11日、女性教諭が職場で旧姓使用を求めた訴訟の判決で、東京地裁が違法性はないとし、請求を退けたことは残念である。女性教諭にとって旧姓の名字にこそ、アイデンティティーがあった
▼「戸籍姓を強制され人格権を侵害された」という女性教諭の主張は大げさではない。名前はその人の生きざまを表し、自身のルーツを示す根幹でもある。名前を頼りに親戚を探すウチナーンチュの姿に、その思いを強くした。