<金口木舌>心に響く「沖縄」とは


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 米兵が民家に火を放ち、舞台が赤く染まる。伊江島の農民たちは琉球政府や沖縄本島の住民に訴える。「アメリカは平和を守るという陰で、わが土地を奪って基地を造る」

▼1969年初演の歌劇「沖縄」は代表団を13回沖縄に送って調べた史実を基に、50年代の島ぐるみ闘争を描いた。日本のうたごえ運動初の創作歌劇で、全国31公演を成功させ、沖縄返還運動を盛り上げた
▼それからおよそ半世紀。「沖縄のことが分からない」。東京で、そんな声をよく耳にする。前都知事の公金公私混同や築地移転の問題など東京の地域ニュースが大々的に報じられる中でだ
▼一方の沖縄。米軍属女性暴行殺人事件や辺野古裁判、高江集落近くでのヘリパッド建設、ハリアー墜落など命や人権に関わる重要問題が起きている。だが全国メディアの関心は薄く、県民の多くが米軍基地に反発している理由がよく伝わっていない
▼そのためか「もっと知りたい」と、本土で講演や勉強会に招かれる機会が増えた。琉球併合や沖縄戦、米国統治、復帰後も苦悩が繰り返されている歴史を説明すると、反応がいい
▼歌劇「沖縄」の描写は今の沖縄と重なる。「俺たちは職場から闘いを広げる」。舞台での労働者の合唱は国民へのメッセージだ。より多くの国民の心に響く「沖縄」とは-。無関心を変え、世論を突き動かす「言葉」が今こそ必要だ。