<金口木舌>忌日からしのぶ先覚


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 このほど復刻刊行された瀬底月城著「沖縄・奄美 南島俳句歳時記」に、月ごとの忌日表がある。11月は1日が春潮忌、12日が敏雄忌、22日が正忠忌、25日が善忠忌である。誰のことかお分かりだろうか

▼順に比嘉春潮、島尾敏雄、山城正忠、仲原善忠。それぞれ歴史・民俗研究者、「死の棘(とげ)」やヤポネシア論で知られる作家、近代沖縄を代表する歌人、「おもろさうし」研究者である
▼この歳時記には沖縄・奄美にゆかりの深い38人の忌日が挙げられている。21年ぶりの復刻に際して3人の俳人が加えられた
▼忌日の呼び方は名前そのままが多いが、号からのものも多い。物外忌(8月13日)は伊波普猷。虻州(きゅうしゅう)忌(1月24日)は東恩納寛惇。寂泡忌(7月21日)は池宮城積宝。笑古忌(12月28日)は真境名安興。文若忌(12月29日)は蔡温である
▼おやと思う人物も。初めて全身麻酔手術を成功させた医師、高嶺徳明の徳明忌は1月15日。沖縄愛楽園を創設した青木恵哉(けいさい)は俳人でもあった。恵哉忌は3月6日。石垣島測候所第2代所長の岩崎卓爾の卓爾忌は5月18日
▼今月19日に比嘉春潮、仲原善忠、金城朝永の名を冠した沖縄文化協会賞の受賞式が沖縄国際大で行われる。同協会の会長も務めた仲原善忠をたたえ、毎年善忠忌の頃に開催している。受賞者3人の最新の研究成果に触れながら、先覚の業績をしのびたい。